デジタル時代の今日、動画は最も強力なコミュニケーションツールの一つとなっています。
しかし発信手段の多様化やクリエイティブ制作の民主化などにより市場に動画コンテンツが溢れ始めているこの時代において、単に動画を作るだけでは不十分です。
視聴者の心を掴み、真に「伝わる」動画を作るには、緻密に練られた戦略とそれを表現する技術が必要なのです。
私自身が動画を制作するにあたって、毎回参考にしている考え方があります。
それは2020年に発刊された「【改訂版】いきなり効果があがるPR動画のつくり方」(新井一樹 編著、言視舎)の中で紹介されているPR動画の4タイプです。
編著者である新井さんがnoteで本書籍の序章と1章を公開していますので、ぜひそちらを参考にしてみてください。
動画制作を依頼する側の企業担当者や広報担当者にとってもとても有益な情報が多く掲載されています。
改訂版が発売した『PR動画の作り方』の序章と1章を載せてみました
https://note.com/scenariocenter/n/n39aab45ab583?magazine_key=m0805ea1a7df7
本コンテンツでは上記記事に掲載されているPR動画の4タイプを引用する形で、視聴者の心を掴む動画を作るための考え方について深堀していきたいと思います。
■PR動画の4タイプ
企業が動画を使用してPRしたい場合は、ほぼほぼ以下の2つに絞られます。
- 商品やサービスの紹介
- 会社理念の発信(ブランドイメージの浸透)
「いきなり効果があがるPR動画の作り方」では、この2つを数字や特長などを使って直接的に紹介するのか、それらを使わずに間接的に紹介するのか、表現方法で分けています。
PR動画には大きく分けて4つのタイプがあります。
これが「伝わる動画」を作るためのポイントです。
この4タイプを使えば、どんな目的で、誰に、どんな媒体を使って動画を作るのかを考えられるようになります。
A.商品直接型
- 商品やサービスの購入をお客様に促すときに効果的
- 商品やサービスについての具体的な数字や機能について伝える
- 生活雑貨全般(家電・食品・衣類・雑貨)に使える
- 商品紹介ページ、ECサイト(Web)、公式SNSとの相性がいい
- シナリオの難易度は低い
ドライクリスタル TVCM「ビールとの新しい付き合い方」橋本環奈篇 30秒
B.商品間接型
- 長期間での認知拡大、ファンの獲得をしたいときに効果的
- 商品やサービスによる体験を伝える
- 体験に重きを置くサービス(レストラン・宿泊施設)などに使いやすい
- SNS広告との相性がいい
- シナリオの難易度はやや低い
メーカーズマーク『君がいるから』篇 30秒 サントリー CM
C.理念直接型
- 企業理念をより詳しく伝えたいときに効果的
- 企業の理念や目標について、明確なメッセージを伝える
- 求人サイトや会社案内、リクルート、社内広報向け
- シナリオの難易度はやや高め
三菱地所 採用コンセプトムービー “NANIMONO”
D.理念間接型
- 企業理念をより多くの人に知ってもらいたい場合に効果的
- 企業の考え方や理念を感じ取ってもらう
- SNS広告との相性がいい
- シナリオの難易度は高め
早稲アカブランドムービー「虫好きの少女」篇
いきなり動画を作ろうとしても「何を伝えていいのか分からない」「どのような方向性で動画を作ればいいのか分からない」など多くの壁にぶつかってしまいます。
この4つのタイプに分けて考えることで、制作前に考えるべき情報(目的やターゲットなど)も整理することができます。
いきなり手を動かすのではなく、しっかりと情報を整理するという手順を踏むことが伝わる動画を作るための第一歩になります。
■顕在層と潜在層
上記に紹介したPR動画の4つのタイプでは、商品や理念を伝える手段として直接的なアプローチ(直接型)か間接的なアプローチ(間接型)に分かれていました。
その直接型、間接型によって適したターゲットというものが存在しています。
どんな商品やサービスであっても、購入するまでのプロセスにはまず誰もが認知することから始まります。
認知したユーザーの中から一部が興味や関心を持ち、さらに比較・検討の段階まで進んで、最終的に購入に至ります。
このような認知から購入するまでのプロセスを「パーチェスファネル」といいます。
購買段階が進むごとに、徐々に人数が絞り込まれていく様子が逆三角形の漏斗(ろうと)のような形で表現されています。
潜在層:
潜在層とは、商品やサービスに興味や関心がないもしくは認知していないユーザー層です。この層はニーズの有無も不明なので、まずは商品やサービスについて認知してもらう必要があります。
顕在層:
顕在層とは、ニーズがあり、商品やサービスを認知しているユーザー層です。この層は、商品やサービスの検討段階にあるので、各ユーザーに適した丁寧なアプローチや他社との差別化など選ばれる理由を示すことができれば購入に至る可能性があります。
自社の商品やサービスについてすでに興味を持っている方(顕在層)をターゲットにする場合に有効な表現手段が「直接型」です。
すでに興味を持っている方をターゲットにする直接型の動画では、商品についての詳細な情報や会社理念について、ストレートに伝えることが効果的です。
商品やサービスの具体的な詳細を知りたいと思っている方のため、逆に間接的なアプローチをしてしまうことで知りたい情報を得ることができずに購買意欲が低下してしまう可能性があるため注意が必要です。
自社の商品や理念についてまだあまり知らない方(潜在層)をターゲットにする場合に有効な表現手段が「間接型」です。
商品やサービスについてまだ興味を持っていない方に対して、商品やサービスの具体的な説明をしても聞く耳をもってくれません。
しかし、その商品・サービスを利用することであなたの生活や未来がこんなふうに変わるなどのイメージを間接的にアピールすることで、認知さらには興味をもってくれる可能性があります。
このようにターゲットは、興味を持っている「顕在層」とこれから興味を持ってもらいたい「潜在層」の二つに分けることができます。
ターゲットの属性や動画を制作する目的に合わせて、直接型か間接型の表現方法を選ぶことがとても重要となります
「伝わる動画」を作るためには、目的の明確化、ターゲットの設定、質の高いシナリオ、適切な戦略が必要不可欠です。
これらの要素を押さえることで、視聴者の心に響く効果的なPR動画を制作することができるでしょう。
ぜひ本記事で紹介した「【改訂版】いきなり効果があがるPR動画のつくり方」(新井一樹 編著、言視舎)も手に取って読んでみてください!