「デザイン」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

おしゃれなロゴ?
スタイリッシュな製品?

実は、デザインの本質はそれだけではありません。
驚くべきことに、デザイン主導の企業は、S&P 500指数を10年間で211%上回る成長を遂げているのです。
この記事では、デザインの真の力と、それがビジネスにもたらす革命的な影響について解き明かします。

この記事で学べること

  • デザインの狭義と広義の定義とその重要性
  • デザインのもつ4つの力
  • デザイン経営が企業にもたらす具体的なメリット

1. デザインの本質:形以上の存在

デザインという言葉の語源はラテン語の「Designare」にあるといわれています。
Designareは「計画に基づき作ること」「創ること、考案すること、意図すること」という意味であったといわれています。
このことからデザインは、モノの姿や形よりも「計画」や「意図」にこそ本質があるのだと言えます。
これは、ビジネスの世界でも同じことが言えます。

デザインとは、目に見えるものを美しく整えるだけでなく、目に見えない価値を創造し、人々の生活を豊かにすること。

2. 狭義のデザイン:形に魂を吹き込む技

狭義のデザインとは、モノに形を与えることです。
例えば、商品パッケージやウェブサイトのレイアウトなどがこれにあたります。
デザインと言われて一般的にイメージする人が多いのがこの「狭義のデザイン」だと思います。

3. 広義のデザイン:アイデアを現実にする力

広義のデザインは「企画する」「整理する」「設計する」といった幅広い意味を持ちます。
これは、ビジネスの様々な場面で活用できる強力なツールです。
例えば、新しいサービスを企画する際、顧客のニーズを深く理解し、それに基づいてアイデアを形にしていく過程全体がデザインと言えるのです。

Airbnbの成功は、広義のデザインの力を示す好例です。
彼らは「どこでも家にいるような体験」というコンセプトを中心に、ユーザーインターフェースから host-guest間のコミュニケーションまで、すべてをデザインしました。

4. デザインのもつ4つの力

この「狭義のデザイン」と「広義のデザイン」をさらに分解すると以下のデザインの力に集約されます。

①問いの発見:
既存の枠組みにとらわれず、新しい視点で課題を見つける

②創造の可視化:
アイデアを具体的な形にし、共有・検討を容易にする

③情報の整理:
複雑な情報を分かりやすく整理し、意思決定を支援する

④心を動かすカタチをつくる:
独自性のあるカタチで感情に訴えかけ、人々の行動を促す

デザインとして最終的に形として見えるのは狭義のデザインにあたる「④心を動かすカタチをつくる」だけになりますが、優れたデザインの裏側には必ず「①問いの発見」「②創造の可視化」「③情報の整理」の工程が存在しているのです。

これらの力を活用することで、企業は革新的な製品やサービスを生み出し、顧客との強い絆を築くことができます。

5. デザイン経営:デザインの視点を企業経営に取り入れる

企業の経営にこの「広義のデザイン」の視点を取り入れた手法こそが、最近よく耳するようになった「デザイン経営」というものです。

「デザイン経営」とは、デザインの力を「ブランドの構築」や「イノベーションの創出」に活用する経営手法です。
その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

産業競争力とデザインを考える研究会報告書『「デザイン経営」宣言』(2018年5月23日、経済産業省・特許庁)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kyousou-design/document/index/01houkokusho.pdf

デザイン経営についてはまた別の記事で取り上げる予定ではいますが、デザインの力を企業経営に取り入れることで以下のような効果が期待できます。

  • 企業のビジョンやコンセプトの可視化
  • 一貫した思想や世界観の表現
  • 他企業にはない独自の価値の伝達
  • ユーザーの潜在的ニーズの発見
  • 既存に捉われない新しいアイデアの発想

このように企業のブランド力やイノベーション力が向上することによって、独自性のある商品やサービスを開発しようという動きが生まれ、その結果、企業競争力が向上していくのです。

デザイン経営については「経営陣の理解不足」「定量的な効果判定が難しい」「組織体制が整っていない」など多くの課題も抱えており、なかなか社会に浸透したと言うまでには至っていないのが現状ではありますが、それでもデザインの視点を経営に取り入れる企業が少しずつ増えてきているのもまた事実です。

■まとめ:デザインで描く、輝かしい未来

デザインは単なる見た目の問題ではありません。
それは、ビジネスの本質に迫り、革新を生み出す強力なツールなのです。

狭義のデザインは製品やサービスに形を与え、広義のデザインは企業の戦略や文化をカタチ作ります。
デザインの4つの力を理解し、デザインを経営に取り入れていくことで、企業は大きな成長を遂げる可能性があります。

まずは、あなたの仕事や日常生活の中で「デザイン思考」を意識的に取り入れてみてはいかがでしょうか?
新しい課題に直面したとき、デザイン思考のプロセスを思い出してください。
ユーザーの立場に立ち、問題を再定義し、多様なアイデアを出し、素早くプロトタイプを作り、テストを繰り返す。
この実践が、あなたのビジネスや人生に新たな可能性をもたらすはずです。

デザインの力を信じ、それを活用する勇気を持つこと。
それが、イノベーションへの第一歩なのです。