2018年に経済産業省と特許庁が発表した「デザイン経営」宣言。
デザイン経営は、経営の意思決定や実行においてデザインの視点を取り入れる経営手法として、製造業に限らず、サービス開発や地方自治体の運営などにも活用されています。
引用:特許庁はデザイン経営を推進しています
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html
1.「デザイン経営」とは何か?
「デザイン経営」は、デザインを重要な経営資源として活用し、企業の競争力を高める経営手法です。
具体的には、
・ブランド力の向上
・イノベーション力の強化
を通じて、企業価値を高めることを目指します。
デザインは、企業が⼤切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営みでです。
それは、個々の製品の外⾒を好感度の⾼いものにするだけではありません。
顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を徹底させ、それが⼀貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代替できないと顧客が思うブランド価値が⽣まれます。
さらに、デザインは、イノベーションを実現する⼒にもなります。
それは、デザインが⼈々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営みでもあるからです。
デザインを通して気づいた潜在的なニーズを、企業の価値と意志に照らし合わせることで、誰のために何をしたいのかという原点に⽴ち返ることができます。
そうすることで既存の事業に縛られずに、事業化を構想できるのです。
2.なぜ今「デザイン経営」が必要なのか?
世界のビジネス環境が大きく変化する中、日本企業の競争力強化が急務となっています。
- 人口減少により日本市場の魅力が低下
- デジタル技術の進歩で従来の常識が通用しなくなった
- 顧客体験の質が重視される時代に
このような状況下で、デザインを活用した経営が注目されています。
3.「デザイン経営」の効果は?
海外の調査によると、デザインへの投資は高い効果が期待できます。
・1ポンドの投資で4倍の利益増加(イギリス)
・デザイン重視企業の株価は10年で2.1倍成長(アメリカ)
4.「デザイン経営」を実践するには?
以下の2点が必要条件となります。
① 経営チームにデザイン責任者を置く
② 事業戦略の立案段階からデザインを関与させる
その他、具体的な取り組みとしては、
- デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
― デザインを企業戦略の中核に関連付け、デザインについて経営メンバーと密なコミュケーションを取る。 - 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
― デザイナーが最上流から計画に参加する。 - 「デザイン経営」の推進組織の設置
― 組織図の重要な位置にデザイン部⾨を位置付け、社内横断でデザインを実施する。 - デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
― 観察⼿法の導⼊により、顧客の潜在ニーズを発⾒する。 - アジャイル型開発プロセスの実施
― 観察・仮説構築・試作・再仮説構築の反復により、質とスピードの両取りを⾏う。 - 採⽤および⼈材の育成
― デザイン⼈材の採⽤を強化する。また、ビジネス⼈材やテクノロジー⼈材に対するデザイン⼿法の教育を⾏うことで、デザインマインドを向上させる。 - デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫
― 指標作成の難しいデザインについても、観察可能で⻑期的な企業価値を向上させるための指標策定を試みる。
などが挙げられます。
5.政府の取り組み
「デザイン経営」を推進するため、政府は以下の施策を実施します。
- 情報分析と啓発活動
- 意匠法の改正による保護拡大
- 高度デザイン人材の育成と海外人材の獲得
- デザイン投資への財政支援
- 行政サービスへのデザイン思考の導入
これらの取り組みを通じて、日本企業の「デザイン経営」を後押しし、産業競争力の強化を目指します。
「デザイン経営」は、単に製品の見た目を良くするだけでなく、企業の価値観を表現し、イノベーションを生み出す力となります。ぜひ、自社の経営にデザインの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか?